大切な家族が亡くなった後、遺影をどこに飾るべきか悩まれる方は少なくありません。伝統的には仏間や床の間に飾るのが一般的とされていますが、現代の住宅事情では必ずしもそうした空間があるとは限りません。また、四十九日の前後で飾る場所が変わることや、方角にも配慮が必要だという話を耳にして、戸惑われる方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、遺影を飾る場所に関する基本的なマナーから、現代住宅に合わせた実用的な飾り方、さらには生前に準備しておくべき写真のポイントまで、総合的に解説します。伝統を尊重しながらも、ご家族が無理なく故人を偲べる環境づくりのヒントとしてお役立てください。
遺影を飾る場所の基本ルールとマナー

遺影を飾る場所については、時期によって適切な場所が変わります。ここでは、四十九日を境にした飾り方の違いと、基本的なマナーについて解説します。
四十九日までの飾り方
葬儀が終わってから四十九日法要までの間は、故人の魂がまだこの世とあの世の間にいるとされる期間です。この時期には「後飾り祭壇」と呼ばれる祭壇を設け、そこに遺影を飾るのが一般的です。
後飾り祭壇は、遺骨や位牌、供物とともに遺影を安置する場所で、通常はリビングや居間など、家族が日常的に過ごす場所に設置します。この期間は故人を身近に感じながら供養する大切な時間であり、祭壇の前で手を合わせたり、故人の好きだったものをお供えしたりします。
後飾り祭壇の設置場所として適しているのは、家族が集まりやすく、落ち着いて故人を偲べる空間です。直射日光が当たらず、湿気の少ない場所を選ぶことで、遺影や供物を良好な状態に保つことができます。
四十九日以降の飾り方
四十九日法要が終わると、遺骨は納骨され、位牌は仏壇に安置されます。このタイミングで遺影も恒久的に飾る場所へ移動させるのが一般的です。
伝統的に最も適しているとされるのは仏間や床の間です。仏間は仏壇を安置するための専用の部屋や空間で、静かに故人を偲ぶのに適しています。床の間は日本家屋における格式の高い場所であり、掛け軸や生け花とともに遺影を飾ることで、故人への敬意を表現できます。
ただし、遺影を飾る際に避けるべき場所もあります。最も重要なのは、仏壇の中や仏壇の真上に遺影を置かないことです。仏壇は本来、ご本尊を安置する場所であり、遺影は故人の生前の姿を偲ぶためのものという位置づけの違いがあります。そのため、仏壇と遺影は別々の場所に配置するのが正しいマナーです。
仏壇の近くに遺影を飾る場合は、仏壇の横や斜め前など、少し離れた位置に置くようにしましょう。また、直射日光が強く当たる場所や、湿気の多い場所、エアコンの風が直接当たる場所なども、写真の劣化を早める原因となるため避けるべきです。
神棚の近くも避けたほうが無難です。神道と仏教では信仰の対象が異なるため、神棚と遺影を近接して配置することは、宗教的な観点から適切ではないとされています。
遺影を飾る方角と向きの考え方

遺影を飾る際、方角についても気にされる方がいらっしゃいます。一般的には南向きまたは東向きに遺影を配置するのが良いとされています。
南向きは風水や仏教の考え方において、最も明るく陽の気が満ちる方角とされています。故人が明るい場所で安らかに過ごせるようにという願いが込められています。東向きも同様に、朝日が昇る方角として縁起が良いとされ、新しい始まりや希望を象徴します。
ただし、これらの方角に関する考え方は絶対的なルールではありません。宗派によっても見解が異なりますし、何より住宅の間取りによっては理想的な方角に配置することが難しい場合もあります。
最も大切なのは、故人を偲びやすい場所に遺影を飾ることです。方角にこだわりすぎて、家族が日常的に手を合わせにくい場所になってしまっては本末転倒です。南向きや東向きが難しい場合でも、北向き以外であれば問題ないとする考え方もあります。
実際、現代の住宅事情では、方角よりも「家族が自然に故人を偲べる場所」「写真が傷みにくい環境」を優先して配置することが推奨されています。迷った場合は、ご自身の宗派の僧侶や葬儀社の担当者に相談してみるのも良いでしょう。
現代住宅での遺影の飾り方

伝統的な仏間や床の間がない現代の住宅では、どのように遺影を飾ればよいのでしょうか。ここでは、マンションや新築住宅での実用的な飾り方をご紹介します。
リビングに飾る場合の注意点
仏間がない住宅で最も選ばれることが多いのが、リビングや居間です。家族が日常的に過ごす場所であるため、自然に故人を偲ぶことができるという利点があります。
リビングに遺影を飾る際は、専用の棚やサイドボードを用意するのがおすすめです。テレビ台の上や本棚の一角ではなく、遺影のための空間を確保することで、故人への敬意を表現できます。棚には花立てや香炉、ろうそく立てなども一緒に配置すると、簡易的な供養スペースとして機能します。
配置する高さにも配慮が必要です。遺影は目線よりもやや高い位置に飾るのが望ましいとされています。これは故人を見上げる形になることで、敬意を示すという意味があります。ただし、高すぎると手を合わせにくくなるため、立った状態で目線から少し上、座った状態で見上げる程度の高さがちょうど良いでしょう。
リビングに飾る場合、来客が多いご家庭では気になるかもしれません。その場合は、ついたてや観葉植物で緩やかに仕切ったり、寝室など家族だけの空間に移動させたりするのも一つの方法です。大切なのは、ご家族が無理なく故人と向き合える環境を整えることです。
サイズを小さくする選択肢
伝統的な遺影は四つ切りサイズ(254×305ミリ程度)が一般的ですが、現代住宅の限られた空間では大きすぎると感じることもあります。その場合、キャビネサイズ(120×165ミリ程度)やL判サイズ(89×127ミリ程度)に小さくすることも問題ありません。
小さめの遺影は、仏壇の横に置いたり、リビングの棚に飾ったりする際にも場所を取らず、インテリアとも調和しやすくなります。特に複数の遺影を飾る場合は、小さめのサイズにすることでバランス良く配置できます。
最近では、デジタルフォトフレームを活用する方も増えています。複数の写真をスライドショー形式で表示できるため、故人の様々な表情や思い出の場面を楽しむことができます。Wi-Fi対応のデジタルフォトフレームなら、離れて暮らす家族が写真を追加することも可能です。
ただし、デジタルフォトフレームを使用する場合でも、きちんとしたプリント写真を一枚は用意しておくことをおすすめします。法事の際や、電源のない場所で遺影が必要になることもあるためです。
複数の遺影を飾る順番と配置

ご両親や祖父母など、複数の故人の遺影を飾る場合、配置の順番にもマナーがあります。基本的なルールは「右から左へ、亡くなった順に並べる」というものです。
日本の伝統的な考え方では、右側が上位とされています。そのため、最も先に亡くなった方の遺影を向かって右側に、次に亡くなった方を左側に配置します。三人以上の場合は、右、中央、左という順番になります。
ただし、夫婦の遺影を並べる場合は少し考え方が異なります。たとえご主人が先に亡くなっていても、伝統的には男性を右側(向かって左)、女性を左側(向かって右)に配置することが一般的です。これは「夫婦の配置」という考え方を優先するためです。
とはいえ、これらのルールも絶対的なものではありません。ご家族が自然だと感じる配置で構いませんし、スペースの都合で上下に配置することもあります。大切なのは、故人への敬意と、ご家族が心を込めて手を合わせられる配置であることです。
複数の遺影を飾る際は、サイズを統一することでバランスが良くなります。また、額縁のデザインや色も揃えると、より整った印象になります。限られたスペースに複数の遺影を飾る場合は、前述のように小さめのサイズを選ぶことも検討してみてください。
遺影写真の準備と選び方

遺影として使用する写真は、葬儀の際に慌てて選ぶことになりがちです。しかし、適切な写真が見つからず後悔するケースも少なくありません。ここでは、遺影に適した写真の条件と、生前に準備しておく選択肢についてご紹介します。
遺影に適した写真とは
遺影に適した写真にはいくつかの条件があります。まず、本人が一人で写っているものが基本です。複数人が写っている写真から本人だけを切り抜くこともできますが、画質が粗くなったり不自然な仕上がりになったりすることがあります。
次に、顔がはっきりと写っていることが重要です。小さく写っている写真や、横顔、うつむいている写真などは、遺影として引き伸ばした際に見づらくなります。正面を向いていて、表情が穏やかな写真が理想的です。
服装も配慮したいポイントです。派手すぎる服装や、あまりにもカジュアルな格好は避けたほうが無難です。かといって、必ずしも喪服や礼服である必要はありません。その方らしい、少しきちんとした装いの写真が適しています。
背景もできるだけシンプルなものが望ましいとされています。ごちゃごちゃした背景は遺影として落ち着かない印象を与えることがあります。ただし、最近では写真加工技術の向上により、背景を差し替えることも可能になっています。
写真の撮影時期については、あまり古すぎないものが良いでしょう。20年前、30年前の写真では、参列者が故人の姿を思い浮かべにくくなります。できれば60代以降の写真で、本人の雰囲気が伝わるものを選びたいものです。
生前に撮影しておく選択肢
最近では、遺影を生前に準備しておく方が増えています。終活の一環として、自分が納得のいく写真を撮影しておくことで、家族の負担を減らすだけでなく、自分らしい姿を残すことができます。
写真館で撮影する場合、遺影用のプランを用意しているところも多くあります。プロのカメラマンによる撮影と、適切な照明、レタッチにより、自然で美しい仕上がりになります。背景や服装についてもアドバイスを受けられるため、安心して撮影に臨めます。
例えば、60代・70代・80代のための撮影サービス「ロクナナハチ(678)」では、シニア世代に特化した撮影プランを提供しています。プロのヘアメイクと撮影技術により、記念日の写真として楽しみながら撮影でき、結果的に万が一の時にも使える写真を準備できます。全国の写真館で利用可能で、累計12,000人超の方々が利用されています。
こうしたサービスでは、「遺影」という言葉を前面に出すのではなく、「記念撮影」「変身体験」として前向きに捉えられるよう工夫されています。還暦や古希などの節目に、家族と一緒に撮影するのも良い記念になるでしょう。
生前撮影のメリットは、本人が納得のいくまで撮り直しができることです。表情や角度、服装を変えて複数枚撮影し、その中からベストな一枚を選ぶことができます。また、データとして保管しておけば、必要に応じて様々なサイズにプリントすることも可能です。
スマートフォンで日常的に写真を撮る習慣をつけておくことも大切です。プロの撮影に抵抗がある場合でも、家族との食事会や旅行の際に、きちんとした服装で正面を向いた写真を何枚か撮っておけば、いざという時に選択肢が広がります。
遺影の保管と処分方法

遺影は長期間飾り続けるものですが、経年劣化は避けられません。ここでは、遺影を良い状態で保管する方法と、処分が必要になった場合の対応についてご説明します。
写真は光や湿気、温度変化によって劣化します。直射日光が当たる場所に飾ると、数年で色あせてしまうことがあります。そのため、窓から離れた場所に飾るか、UVカットガラスの額縁を使用することをおすすめします。
湿気も写真の大敵です。湿度の高い場所に長期間置いておくと、カビが発生したり、写真がくっついてしまったりすることがあります。除湿剤を近くに置いたり、定期的に空気を入れ替えたりすることで、湿気対策ができます。
額縁に入れて飾る場合、ガラスではなくアクリル板を使用した額縁のほうが軽く、落下しても割れにくいという利点があります。特に地震が多い日本では、安全性の面でもアクリル額縁が推奨されます。
長期保管のために、写真をデータ化しておくことも重要です。スキャンしてデジタルデータとして保存しておけば、元の写真が劣化したり紛失したりしても、再プリントすることができます。クラウドストレージに保存しておけば、複数の家族が共有することも可能です。
遺影の処分が必要になる場合もあります。家の建て替えや引っ越し、あるいは世代交代によって遺影を整理する際、そのままゴミとして捨てることに抵抗を感じる方は多いでしょう。
その場合は、お寺や神社で「お焚き上げ」をしてもらうのが一般的です。お焚き上げは、感謝の気持ちを込めて供養しながら処分する方法です。多くのお寺では、お盆やお彼岸の時期にお焚き上げの受付をしています。費用は数千円程度が相場です。
葬儀社でもお焚き上げのサービスを提供していることがあります。遺影だけでなく、位牌や仏具などもまとめて供養してもらえるため、便利です。
もう一つの方法として、遺影をデータ化した上で、現物は供養して処分するという選択肢もあります。デジタルデータとして残しておけば、必要に応じて見返すことができますし、場所も取りません。
ただし、処分を急ぐ必要はありません。ご家族の中で意見が分かれる場合は、無理に処分せず、当面は保管しておくという選択もあります。大切なのは、故人への感謝の気持ちを持ち続けることです。
まとめ
遺影を飾る場所は、伝統的には仏間や床の間が基本とされていますが、現代住宅ではリビングや居間に飾ることも一般的になっています。四十九日までは後飾り祭壇に、それ以降は恒久的な場所へと移動させるのが一般的な流れです。
方角については南向きや東向きが理想とされますが、最も大切なのは家族が自然に故人を偲べる環境を整えることです。住宅事情や間取りに応じて、柔軟に配置場所を選んでください。
遺影のサイズや飾り方も、必ずしも伝統的な形式にこだわる必要はありません。小さめのサイズにしたり、デジタルフォトフレームを活用したりすることで、現代のライフスタイルに合わせた供養の形が実現できます。
何よりも大切なのは、生前に適切な写真を準備しておくことです。急に写真を探すのではなく、本人が元気なうちに記念撮影をしておくことで、本人も家族も納得のいく遺影を残すことができます。生前に記念撮影を検討される方は、ロクナナハチ公式サイトでお近くの対応スタジオを探すことができます。
遺影は故人を偲ぶための大切なものです。形式やマナーも重要ですが、それ以上に、ご家族が心を込めて手を合わせられる環境を整えることを優先してください。この記事が、皆様の遺影の飾り方を考える際の参考になれば幸いです。