生前に遺影写真を撮影する方が増えています。従来は終活の一環として捉えられることが多かった遺影写真撮影ですが、最近では誕生日や記念日に素敵な写真を残したい、いつかは遺影としても使えればという前向きな考え方が広がっています。
病気をきっかけに今の姿を残しておきたいと考える若い世代の方、還暦や古希などの節目に家族と一緒に撮影する方、一人で気軽にプロの撮影を体験したい方など、撮影の動機は多様化しています。
本記事では、遺影写真撮影の料金相場からスタジオの選び方、撮影当日の流れまで、初めての方でも安心して進められるよう、現場のリアルな情報をもとに全体像を解説します。
遺影写真撮影はこんな方におすすめ

遺影写真撮影は、さまざまな目的で利用されています。ご自身の状況や気持ちに合わせて、前向きに撮影を検討してみてはいかがでしょうか。
誕生日や還暦、古希などの記念日に、プロのカメラマンによる本格的な撮影を体験したい方には最適です。ヘアメイクを施してもらい、普段とは違う自分の姿を写真に残すことは、特別な思い出になります。その写真が将来的に遺影としても使えるという安心感も得られます。
病気や人生の転機を迎え、今の自分の姿を残しておきたいと考える方も増えています。若い世代の方でも、大きな病気をきっかけに「元気な今の姿を写真に残しておこう」と撮影を決意される方は少なくありません。前向きに自分と向き合う一つのきっかけとして、写真撮影は大きな意味を持ちます。
終活の一環として、ご家族の負担を減らしたいと考える方にもおすすめです。生前に納得のいく写真を準備しておくことで、残されたご家族が慌てて写真を探す必要がなくなります。ご自身が選んだ服装、表情、雰囲気で最期のお別れができることは、本人にとってもご家族にとっても安心につながります。
一人で撮影に行くことに抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には一人で来店される方も多くいらっしゃいます。プロのスタッフが丁寧に対応してくれるため、リラックスして撮影に臨めます。もちろん、ご家族やお友達と一緒に来店して、記念撮影を楽しむこともできます。
遺影写真撮影の料金相場を理解する
遺影写真撮影を検討する際、最も気になるのが料金ではないでしょうか。撮影料金は依頼先やプラン内容によって異なりますが、おおよその相場を把握しておくことで予算計画が立てやすくなります。
理論上は、撮影のみの基本プランで1万円から1万5,000円程度、ヘアメイク込みで1万5,000円から2万5,000円程度という価格設定もあります。しかし、実際には多くの方が額縁込みのフルパッケージを選択されており、4万円から5万円程度が現実的な相場となっています。
フルパッケージには、プロによるヘアメイク、撮影、データ提供、そして葬儀で実際に使用する四切サイズの額縁や自宅用のキャビネサイズの額縁などが含まれます。撮影した写真をそのまま遺影として使用できる形で受け取れるため、追加の手間や費用がかからず、多くの方に選ばれています。
一方、葬儀社で撮影を依頼する場合は2万5,000円から3万円程度が相場です。葬儀の事前相談と同時に撮影の予約ができる利便性がありますが、提携先のスタジオに委託しているケースもあり、サービス内容や雰囲気は事前に確認しておくとよいでしょう。
すでに気に入った写真がある場合は、既存写真の加工という選択肢もあります。写真の修正や加工のみを依頼する場合は5,000円から7,000円程度で、額縁を追加すると1万円から1万2,000円程度になります。ただし、元の写真の解像度やピントによっては、きれいに仕上がらない可能性もあるため注意が必要です。
撮影当日の流れと所要時間
遺影写真撮影がどのように進むのか、事前に流れを知っておくことで安心して当日を迎えられます。
写真館での撮影は、まずヘアメイクから始まります。女性の場合、フルメイクとヘアセットで60分程度かかることが一般的です。プロのヘアメイクスタッフが、お顔の特徴や服装に合わせて、自然で美しい仕上がりを目指します。普段あまりメイクをしない方でも、プロの技術によって明るく上品な印象に整えてもらえます。
男性の場合はヘアセットが中心となり、30分から40分程度で完了することが多いです。整髪料を使って自然にスタイリングし、清潔感のある印象に仕上げます。
ヘアメイクが完了したら、いよいよ撮影です。撮影時間は20分から30分程度で、プロのカメラマンが表情や角度を変えながら複数枚撮影します。最初は緊張する方も多いですが、カメラマンが自然な笑顔を引き出してくれるため、リラックスして臨むことができます。
撮影後は、その場で写真を確認しながらベストショットを選びます。気になる部分があれば、シミやシワの軽減、明るさ調整などの修正について相談できます。
全体の所要時間は、ヘアメイクと撮影を合わせて80分から90分程度が目安です。余裕を持ったスケジュールで来店することをおすすめします。
遺影写真撮影ができる場所とそれぞれの特徴

遺影写真撮影は、さまざまな場所で依頼できます。それぞれの特徴を理解した上で、ご自身に合った撮影場所を選ぶことが大切です。
写真館・フォトスタジオ
最も一般的な選択肢が、写真館やフォトスタジオでの撮影です。遺影撮影専門のプランを用意しているスタジオも増えており、プロのカメラマンによる撮影、豊富な背景のバリエーション、加工・修正技術など、高品質な遺影を残すための環境が整っています。
写真館での撮影のメリットは、豊富な経験を持つプロが対応してくれる点です。表情の引き出し方、照明の調整、背景の選定など、遺影にふさわしい写真を撮影するためのノウハウを持っています。また、撮影データを提供してくれるスタジオが多いため、万が一写真を紛失した際のバックアップとしても安心です。
特に女性に人気があり、ヘアメイクから撮影まで一貫してプロに任せられることで、特別な体験として楽しむことができます。誕生日や記念日に合わせて撮影することで、ポジティブな思い出として残ります。
デメリットとしては、スタジオまで足を運ぶ必要がある点が挙げられます。体力に不安がある方や、遠方にしか適切なスタジオがない場合は負担となる可能性があります。
葬儀社の撮影サービス
一部の葬儀社では、生前の遺影撮影サービスを提供しています。葬儀の事前相談と同時に撮影の予約ができるため、終活を包括的に進めたい方には便利な選択肢です。
葬儀社での撮影のメリットは、葬儀に必要なサイズや形式で写真を準備してもらえる点です。葬儀の流れを熟知しているため、実際に使用する際の不安が少なくなります。
一方、葬儀社によっては提携先の写真スタジオに委託していることもあり、料金が割高になるケースがあります。また、撮影の雰囲気が事務的になりがちという声もあるため、記念撮影としても楽しみたい方は、事前に雰囲気を確認しておくとよいでしょう。
出張撮影サービス
近年増えているのが、カメラマンが自宅や思い出の場所に訪問して撮影する出張撮影サービスです。慣れ親しんだ環境で撮影できるため、自然な表情を残しやすいというメリットがあります。
出張撮影の料金相場は1万5,000円から5万円程度と幅があり、移動距離や撮影時間によって変動します。外出が難しい方や、自宅の庭や書斎など特定の場所で撮影したい方に適した選択肢です。
デメリットとしては、自宅の照明環境によっては仕上がりに差が出る可能性がある点です。また、出張費用が加算されるため、スタジオ撮影よりも高額になることが多い点も考慮が必要です。
失敗しないスタジオ選びの5つのチェックポイント
遺影写真は人生で一度の大切な撮影です。後悔のないスタジオ選びのために、以下の5つのポイントを確認しましょう。
背景のバリエーションが豊富かどうかは、重要なチェックポイントです。遺影の印象は背景によって大きく変わります。シンプルな白や落ち着いたベージュ、品のあるグレーなど、複数の色から選べるスタジオを選ぶことで、ご自身の雰囲気に合った背景を見つけやすくなります。事前にホームページで背景サンプルを確認するか、問い合わせ時に選択肢を聞いておくとよいでしょう。
加工・修正技術の有無も大切な要素です。年齢を重ねると、シワやシミ、くすみなどが気になる方も多いでしょう。基本的な美肌加工やシワの軽減、明るさ調整などを標準プランに含んでいるスタジオを選ぶことで、自然でありながら美しい仕上がりが期待できます。過度な加工は本人らしさを損なうため、あくまで自然な範囲での修正に対応しているスタジオが理想的です。
データ提供の可否は、必ず確認しておきたいポイントです。写真の現物だけでなく、デジタルデータも受け取れるスタジオを選ぶことで、複数のサイズにプリントしたり、デジタルフォトフレームで使用したり、用途が広がります。また、万が一写真を紛失した際のバックアップとしても重要です。一部のスタジオではデータ提供に追加料金がかかる場合もあるため、料金体系を事前に確認しましょう。
ヘアメイクサービスの充実度も見逃せません。プロのヘアメイクが基本プランに含まれているか、オプションとして追加できるかを確認しましょう。特に女性の場合、メイクの有無で写真の仕上がりは大きく変わります。フルメイクに60分程度かけてじっくり仕上げてもらえるスタジオなら、特別な体験として楽しめると同時に、より満足度の高い遺影を残せます。
アクセスの良さや予約の取りやすさも、実用的な観点から重要です。自宅から通いやすい場所にあるか、駐車場は完備されているか、予約が取りやすいかなどを確認しましょう。特に体力に不安がある方は、負担の少ないスタジオ選びが大切です。
撮影前に準備しておくべきこと
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遺影写真撮影を成功させるためには、事前の準備が欠かせません。服装、メイク、そしてご家族とのコミュニケーションについて、それぞれポイントを押さえておきましょう。
服装選びでは、フォーマルさと自分らしさのバランスが重要です。遺影の服装に厳格な決まりはありませんが、葬儀で多くの方が目にする写真であることを考えると、ある程度きちんとした装いが望ましいでしょう。男性の場合はスーツや襟付きのシャツ、女性の場合はブラウスやワンピースなど、清潔感のある服装が一般的です。
ただし、最近では記念撮影としての側面も強くなっているため、お気に入りの服や普段よく着ている服で撮影することで、より自然な雰囲気を残すこともできます。その写真が将来的に遺影としても使えればよいという柔軟な考え方が広がっています。
極端にカジュアルな普段着や、派手すぎる色柄は避けた方が無難です。撮影後に服装を合成で変更できるサービスもあるため、服装選びに迷う場合は、スタジオに相談してみるとよいでしょう。
メイクやヘアスタイルについては、プロに任せることをおすすめします。スタジオのヘアメイクサービスを利用すれば、顔立ちや服装に合った、遺影にふさわしいメイクを施してもらえます。ナチュラルで明るい印象を心がけ、暖色系のリップやチークを使うことで、表情が柔らかく温かみのある印象になります。
当日は、ヘアメイクがしやすいよう、スタイリング剤やヘアオイルはなるべく付けずに来店するとスムーズです。女性の場合、メイクをしていても一旦落としてからプロのメイクを施すことが多いため、メイク落としの準備は不要です。
表情やポーズについては、自然な笑顔を意識しましょう。証明写真のように硬い表情ではなく、リラックスした柔らかな表情が、その人らしさを伝える遺影になります。カメラ目線で穏やかに微笑む姿が一般的ですが、最近では少し横を向いた自然なポーズや、趣味の道具を持った写真を選ぶ方も増えています。
撮影当日は、緊張しすぎないことが大切です。プロのカメラマンは表情を引き出すのが得意ですので、自然体で臨むとよい写真が撮れるでしょう。一人で来店される方も多く、スタッフが丁寧にサポートしてくれるため安心です。
ご家族への相談と共有も忘れずに行いましょう。撮影した写真やデータの保管場所をご家族に伝えておくことで、いざという時にスムーズに対応できます。エンディングノートに記載しておくのも一つの方法です。
また、撮影した写真をご家族に見てもらい、意見を聞くことも有効です。ご自身では気づかなかった表情の良さや、服装の印象などについて、客観的なアドバイスがもらえるかもしれません。家族と一緒に撮影に行き、記念写真も残すという方法もおすすめです。
まとめ
遺影写真撮影は、終活だけでなく、誕生日や記念日の特別な思い出として、あるいは人生の転機に自分と向き合うきっかけとして、さまざまな形で利用されています。プロの技術によって美しく撮影された写真は、ご自身にとっても、ご家族にとっても、かけがえのない宝物となります。
実際の料金相場は、多くの方が選ばれる額縁込みのフルパッケージで4万円から5万円程度です。ヘアメイクに60分、撮影に20分から30分、全体で80分から90分程度の所要時間で、特別な撮影体験を楽しめます。
スタジオ選びでは、背景のバリエーション、加工技術、データ提供の有無、ヘアメイクサービス、アクセスの良さという5つのポイントを確認することが大切です。複数のスタジオを比較し、ご自身の希望に合った場所を見つけてください。
撮影前には、服装やメイクを準備し、ご家族とも相談しておきましょう。自然で明るい表情を心がけ、リラックスして撮影に臨むことで、その人らしさが伝わる素敵な遺影を残せます。
一人で来店される方も多く、また家族や友人と一緒に記念撮影を楽しむこともできます。若い世代の方も、病気をきっかけに撮影を決意される方もいらっしゃいます。ご自身のタイミングで、前向きに撮影を検討してみてはいかがでしょうか。
まずは、お近くの写真館やフォトスタジオに問い合わせてみることから始めてみてください。素敵な写真があなたとご家族の未来を明るく照らしてくれるはずです。